他人に花をもたせよう。自分に花の香りが残る。
今でこそ、整備された遊歩道と展望デッキ、そして安心して車を停められる駐車場が完備され、
観光地として多くの人が訪れるようになった佐多岬(鹿児島県・南大隅町)。
前回記事から続きになります。
🌅本土最南端の絶景へ──佐多岬(さたみさき)

けれど、ほんの10年ちょっと前までは──
知る人ぞ知る、“日本の果て”のような秘境感に満ちていました。
🏗️かつては有料道路だった「佐多岬ロードパーク」
かつて、佐多岬の入り口にたどり着くためには、
「佐多岬ロードパーク」(1965〜2013年)という有料道路を通らなければなりませんでした。
これは、1960年代の観光ブームを背景に、
民間企業が建設・管理・運営を担っていた観光目的の私道です。
- 全長約8km、有料(かつては往復800〜1000円)
- 絶景の中を進むドライブコースとして一部の旅行者には人気
- しかし年を追うごとに通行量が減少、インフラの老朽化も進行
さらに、佐多岬周辺は霧島錦江湾国立公園の一部。
公園内という性質上、看板設置や商業利用にも厳しい規制がかかることになり、
管理コストがかかる一方、収益は伸びず……
企業にとっては採算が合わない状態が続いていたのです。

🔄2013年、町が買い取り「みんなの岬」へ
そのような背景を受けて、2013年。
南大隅町が佐多岬ロードパークを買収し、町道として整備・無料化。
これにより、かつては有料だった佐多岬展望公園へのアクセスが完全無料で開放されるようになりました。
あの道を通らないと佐多岬に行けないという構造自体が、
観光の障壁にもなっていたようです。

👣無料化の裏にある、維持のむずかしさ
「無料になってよかった」というのは、観光客目線では正解。
しかし、無料で維持するには、“人手”と“予算”が必要です。
- 道路の補修
- 崖や展望所の安全点検
- トイレや駐車場の清掃と管理
- 国立公園としての景観保護やルール遵守
つまり、“行きやすくなった分”、地元自治体の努力と責任がぐっと増えたわけです。
それでも町がその決断を下したのは、
「佐多岬をもっと多くの人に見てほしい」「町の宝を眠らせたくない」
──そんな想いがあったからに違いありません。
📝まとめ:道は変わった。でも、風景は変わらない
佐多岬が「秘境」だったころを知っている人も、
整備されて訪れやすくなった今、初めて足を運ぶ人も、
あの場所に立てば、果てしない水平線と、心を鎮める静けさにきっと出会えるはずです。
昔は“たどり着くことそのものが旅だった”。
今は“だれもがふらっと行ける、本土の南端”。
でも──そこに吹く風と、空の広さは、きっと変わっていない。

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